又吉直樹『火花』レビュー:芥川賞に輝く芸人小説の真髄


芸人又吉直樹さんの『火花』は、お笑い芸人という題材を扱いながらも、芥川賞を受賞したことで「純文学」の世界にも大きな一石を投じた作品です。
芸人たちの日常や心の葛藤を生き生きと描きつつ、人間の在り方や言葉の重みを深く掘り下げている点にこそ、この小説の“文学性”が光っているんじゃないかなと思います。
文字だけではつかみきれない感情の揺れや、人間関係の微妙なニュアンスが、俳優堤真一さんの声を通じて伝わってきます。
特に、お笑い芸人が主人公の作品だけに、セリフ回しやテンポ感を“耳”で味わうと、よりリアルに楽しめます!

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ざっくりとしたあらすじ

- 主人公・徳永は駆け出しのお笑い芸人。ある日、先輩芸人・神谷と出会い、その奇抜な才能と姿勢に心を奪われます。
- 才能はあるが売れない神谷と、不器用だけど情熱を持つ徳永が、それぞれのコンビでお笑い芸人として『売れる』ことを夢見て奮闘する物語。
- 自分たちの笑いを信じながらも、世間の評価や日常の困窮に苦悩する姿が徳永の成長と神谷の堕落が交錯しながら鮮明に描かれていきます。
純文学としての『火花』

繊細な言葉選び
芸人というと「勢い」や「ノリ」で語られがちですが、『火花』の文章には、緻密に言葉を選び抜いたような繊細さが感じられます。
芸のために日々言葉を扱う主人公たちが、“言葉そのもの”とどう向き合うのかが、文章にも反映されているんですよね。

派手な表現ではないのに、ふと胸に染み入るようなフレーズが多いのも魅力です。
人生観や存在意義を問いかける深さ
『売れるために笑いを取る』というシンプルな目標の裏には、芸人が抱えるプライドや不安、執着がうごめいているはず。
彼らが思わず呟く言葉には、自分自身の存在意義や人生の意味を問いかける要素が散りばめられています。
「生きている限りバッドエンドはない。僕たちはまだ途中だ。」
キャラクター同士の“間”と“会話”
純文学の醍醐味の一つは、直接的な説明を控え、登場人物同士のやりとりから人間性を浮かび上がらせる手法にあると思います。
『火花』でも、徳永と神谷の間で交わされるふたりにしか分からないような独特の会話のやりとりにこそ、彼らの本音が透けて見えてきます。
「師匠、この楓だけ葉が緑ですよ」と僕が言うと、「新人のおっちゃんが塗り忘れたんやろな」と神谷さんが即答した。「神様にそういう部署があるんですか?」と僕が言うと〜

ときに哲学的とも言えるやり取りが印象的なんです。

聴きどころ(読みどころ)・感想

花火のような儚い輝き
タイトルの『火花』が象徴するように、芸人としての成功というのは一瞬で終わるかもしれない儚いもの。
でも、その一瞬に懸けているこそ人々の心を揺さぶる力がある・・・。
心に刺さる“笑い”の裏側
読者である僕は「笑わせる側」の彼らを応援しながらも、実は笑いが生まれる前の鬱屈や苦悩を垣間見て、そこに不思議な共感をおぼえました。
そこがまた純文学らしい深みのある部分。
軽快なやりとりの端々に、芸人たちの真剣な人生観が感じられて、思わず考え込んでしまいます。
著者・又吉直樹さんの視点
又吉直樹さんはお笑いコンビ「ピース」の芸人ですが、太宰治などの純文学への造詣が深いことでも知られています。
人見知りで感受性豊かな性格という印象があり、言葉を厳選するこだわりが強いのもとても人間的に惹かれる部分です。
『火花』にはこの“笑い”と“文学”という両面から培われた視点が色濃く反映されており、若手芸人の奮闘を描きつつも、日々の暮らしや言葉への哲学的な問いかけが随所に感じられます。
ナレーター・堤真一さんの圧倒的表現力


オーディブル版『火花』では、俳優・堤真一さんがナレーションを担当しています。
堤真一さんの声の魅力
堤さんの声は、俳優の世界でも「ダンディで渋い」と評されていますよね。
深みと説得力のある声質が特徴です。
若い声優にはない「艶」や「味わい」があり、聞き手に安心感を与えてくれます。
圧倒的な演技力を活かしたナレーション
堤さんは俳優としてだけでなく、ナレーターとしても多彩な才能を発揮。
NHKの『もふもふモフモフ』では動物の声をコミカルに演じ分ける一方で、ドキュメンタリーでは落ち着いたトーンで語るなど、幅広い表現力を持っています。
『火花』に命を吹き込む朗読
オーディブル版『火花』では、堤さんの渋く力強い声と自然な関西弁が活かされ、小説のリアルな息遣いを見事に表現しています。

登場人物の感情や関係性を声だけで巧みに描き分け、一人舞台を見ているかのような臨場感を生み出しています。
売れない芸人・徳永と先輩・神谷との会話、笑いについての議論が、堤さんの朗読によってより深みを増し、聴き手に強い印象を与えてくれるんです。
堤さんのメリハリあるナレーションが作品の哲学的なテーマや感情を引き立てる要素にもなっていると感じました。

こんな人にオススメ!

純文学は苦手・・・という人
『火花』に限った話ではありませんが、現代における『純文学』は、比較的難解な言い回しが少ないです。
また、『火花』は物語がテンポよく進むので、普段あまり純文学を読まない(聴かない)人にも挑戦しやすいと思います。
お笑いの世界観に興味がある人
テレビなどでは見られない若手芸人の舞台裏がとてもリアルに描かれています。
実際の芸人さんらしい言葉のテンポ感にも注目してみてください。
内省的なストーリーが好きな人
芸人が主人公とはいえ、テーマは人生観や存在意義など、かなり人間の内面に迫る内容です。読み進めるほどに、自分の心が鏡のように映しだされていく感じがしました。
まとめ


『火花』は一見すると「芸人の奮闘記」のようですが、その奥には人生や人間関係の儚さ、情熱、生き方の美学が凝縮されています。
全体を通して派手な展開は少ないかもしれませんが、静かに心に入り込んでくる熱量は相当なもの。
読み終わった後は、やりきれないほどの切なさと、逆にじんわりとした温かさが同時に残りました。

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